【後編】ECoGアレイを支える“微細配線”技術
2025.07.11

── 脳科学研究の可能性を広げる、サーテックの挑戦
前編では、ニホンザルの脳に直接設置する柔軟な電極アレイに、サーテックのフレキシブル基板技術が採用されたことをご紹介しました。
今回は、脳波の正確な取得を支える“微細配線技術”と、研究の社会的意義について掘り下げていきます。
微細なパターンが、信号品質を左右する
今回開発されたECoGアレイには、256個の電極(128チャンネル)が高密度で配置されています。非常に限られたスペースのなかで、電極同士が干渉することなく、1本1本の配線が確実に信号を伝えるには、高度なパターン形成技術が不可欠です。
サーテックでは、これまで医療機器や産業機器で蓄積してきたミクロン単位の微細配線技術を応用。材料の収縮・膨張や製造誤差を最小限に抑え、高密度実装と安定性を両立させました。
その結果、アレイ全体で取得される神経信号は極めてクリアで、外部ノイズや動きによる影響も少なく、学術的にも高く評価されました。
学術界への貢献と、今後の展望
このプロジェクトで得られた神経記録データは、「視覚や聴覚などの刺激に対し、脳のどの領域がどのタイミングで反応するか」を、これまでにない解像度で明らかにするものとなりました。
その意義は、神経科学や認知科学の基礎研究にとどまらず、脳-機械インタフェース(BMI)や医療機器開発など、さまざまな分野へ波及する可能性を秘めています。
本研究成果は、国際科学ジャーナル「Journal of Neuroscience Methods(2014年)」に掲載され、研究者たちの新たな挑戦に向けた土台となりました。
サーテックは、このような研究プロジェクトにおいて、「製造業」という枠を超え、構想段階から技術開発に深く関与。オーダーメイド設計、試作、評価改善、そして量産対応に至るまで、一貫したものづくり力でサポートを行いました。
最先端の研究にこそ、柔軟で信頼性の高い技術が必要とされています。私たちは今後も、研究者の「こうしたい」を形にし、社会にとって意義ある研究の推進力となれるよう取り組んでまいります。